みんみんのメモ帳

理系の男子大学生みんみんの日記です。日々感じたことや学んだこと、そして専門の物理学に関して書いていけたらなと思います。

統計力学①:2次元イジングモデルのモンテカルロシミュレーション(理論編)

 

こんにちは、みんみんです。サンマがおいしい季節になりました。皆様、いかがお過ごしでしょうか。

 

今回は統計力学におけるイジングモデルモンテカルロシミュレーションをしてみたいと思います。私自身、学びなおしの一環で執筆しておりますので、間違い等あればコメントしていただけると助かります。

 

1.そもそもイジングモデルってなに?

結晶を構成する原子間の相互作用が強い系のふるまいを考えるとき、しばしばスピン模型という簡単なモデルを用います。イジングモデルはこのスピン模型の1つであり、下図のように結晶の格子点上に存在する原子のスピンが上または下の成分のみをとると仮定したモデルです。(簡単のために下図は2次元のモデルにしています。)f:id:ryomin_20ku18:20181013131238p:plain

この系のハミルトニアンはスピンを\displaystyle\ S_i として

\displaystyle\ H=-J\sum_{〈ij〉}S_i S_j-h\sum_{i=1}S_i

と表されます。ここでの \ -J\sum_{〈ij〉}S_i S_j の項は相互作用項といい、あるスピン \displaystyle\ S_i と隣接するスピン \displaystyle\ S_j 間に生じる相互作用を表しています。具体的に1次元のモデルで考えると、下図のようにあるスピン \displaystyle\ S_i に隣接しているスピンは \displaystyle\ S_{i+1}   \displaystyle\ S_{i-1} となりますので、注目しているスピン \displaystyle\ S_i には \displaystyle\ -J(S_i S_{i+1}+S_i S_{i-1}) という相互作用が働くことがわかります。ここでの\displaystyle\ J はスピン間相互作用と呼ばれる値ですが、今回は簡単のため定数とします。

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また、第2項の\ h\sum_{i=1}S_i は外部磁場 \displaystyle\ h に伴うゼーマンエネルギーを表しています。

 

2. モンテカルロ法

2-1 モンテカルロ法ってなんだ?

平衡統計力学において系の物理量、例えばエネルギー \displaystyle\ E や比熱  \displaystyle\ C_V を計算するときカノニカルアンサンブルという方法を用います。(カノニカルアンサンブルの基本については最後に載せてあります、参考文献を参照してください。)数値計算の世界でこのカノニカルアンサンブルに置き換わるのがモンテカルロ法という計算法です。

まず、カノニカルアンサンブルにおいて系の物理量Aの熱平均は以下のように与えられます。

\displaystyle\ 〈A〉=\rm{Tr}\  \frac{Ae^{-\beta\ H}}{Z} = \frac{\rm{Tr}\ Ae^{-\beta\ H}}{\rm{Tr}\ e^{-\beta\ H}} = \frac{\displaystyle\ \sum_{i}Ae^{-\beta E_i}}{\displaystyle\ \sum_{i}e^{-\beta E_i}}

この計算には一つ難しいところがあります。系がとりうるすべての状態の和を求める必要があるという点です。そこで、すべての和の計算を実行する代わりに、乱数を用いて適当な状態をサンプリング(ランダムサンプリング)し、それらの平均値として \displaystyle\ 〈A〉 を近似的に求めるのです。では、次に具体的な話をしていきましょう。

2-2 モンテカルロ法の2つの条件

モンテカルロ法により求められた平均値\displaystyle\ 〈A〉 を本当にカノニカルアンサンブルから導出される熱平均の値と認めてしまってもいいのでしょうか?実は2つの条件があります。

条件① エルゴード性の保証

モンテカルロ法においてもし試行回数(ランダムサンプリングを行った回数)が少なかった場合、いくつかの状態がサンプルの中に含まれない可能性があり、もしそうなった場合、熱平均を正しく計算することができなくなります。エルゴード性の保証とは、系のなかで起こりうるすべての状態の実現を保証するということです。これは前述の通り、試行回数を増やせば解決できます。

条件② 詳細釣り合いの条件

ある状態\displaystyle\ i の実現確立を\displaystyle\ P(i) 、状態\displaystyle\ i にある系が別の状態\displaystyle\ j に遷移する確率を\omega_{i→j} としたときに、

\displaystyle\omega_{i→j}\ P(i)\ =\ \omega_{j→i}\ P(j)

を満たすことを詳細釣り合いの条件といいます。つまり状態\displaystyle\ i\displaystyle\ j の遷移確立の比を、それぞれの状態の実現確立の比に取ればいいということです。これは熱平衡条件を実現させるための十分条件であるといわれています。しかし、この詳細釣り合いの条件は上述の通り十分条件であり、実はもう少し緩い条件があります。その紹介も踏まえつつ、実際のモデルへの適用を考えていきましょう。

 

2-3 メトロポリスアルゴリズム

上に書いた詳細釣り合いの条件を踏まえつつ、多くの一般的な系に適用できるアルゴリズムとして「メトロポリスアルゴリズム」というものがあります。メトロポリスアルゴリズムとは、ある系\displaystyle\ i から新たな状態\displaystyle\ j を先に生成し、その状態\displaystyle\ i→j の遷移を認めるか否かを以下の遷移確立に従って決めるというものです。

\omega_{i→j}=1~~~~~~~~~~ (E_i\ <\ E_j)

\omega_{i→j}=e^{-\beta\ \Delta E}~~~~~~ (E_i\ >\  E_j)

ここで \Delta E = E_i\ -\ E_j であり、古い状態 \ i 新しい状態 \ j のエネルギーの差を表します。実際のシミュレーションでは乱数を用いて新しい状態を受け入れるかどうかを決めます。

 

次回は(実践編)ということで実際に2次元イジングモデルをこのメトロポリスアルゴリズムを用いて数値計算していきたいと思います。では、今回はこのあたりで。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

 参考文献

川村 光 , 「統計物理」,丸善出版 ,(1997)

ハーベイゴールド他 , 「計算物理学入門」 ,ピアソンエデュケーション ,(2000)